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  猫のふくぞうちゃんの巻 2008年12月8日~2009年2月5日
   
12.8  ふくぞうちゃんは8才のオスのネコさんです。食べるスピードが遅くなった
   ということで来院しました。5匹いる飼いネコさん達のなかでは一番食欲旺盛な
   ふくちゃんなので連れてきたお父さんも少し気がかりのよう。
   身体検査ではそれらしい原因は認められませんでした。
   食餌を食べているので内服で様子をみることにしました。
   
12.19  食餌を食べているが、下痢をしたよう。
   症状の改善もみられないので、全身状態を把握するため血液検査を実施しました。
   血球検査では比較的強い炎症を示唆する所見がみられました。
   血液化学検査では軽度の黄疸が認められました。
   検査結果から胆汁鬱滞、胆管炎、急性膵炎(の初期?)などを鑑別リストにあげました。
   治療はこれらを考慮して内服薬を処方しました。
   ちなみに急性膵炎の特効薬はありません。
   
12.23  2日前から食欲がなくなり、下痢が悪化したとのこと。
寒そうなのでダウンジャケットをかけ
てあげました。ちょっと元気がない。
2009.1.15撮影
*画像をクリックすると拡大します。
   再度血液検査を実施したところ、黄疸の数値が上がっていました。
なにをされてもなされるがままの
ふくちゃん1歳2か月です。
2001.10.8撮影
*画像をクリックすると拡大します
   追加の超音波検査では胆汁の鬱滞が疑われました。
   これは良くない兆候。
   しかし血球計算の結果をみると炎症は治まってきている可能性がありました。
   おおもとの疾患が改善しているのかも。
   ふくちゃんは薬が嫌いだけどなんとか飲んでいるとのことでした。
   ふくちゃんのお父さんは自宅療養を希望されました。
   この時ふくちゃんの体重は4kgから3.4kgになっていました。
   
12.26  鳥のささみを人参のすりおろしたものと一緒に煮たものを食べたとのこと。
   下痢は治まり吐き気もないよう。
   血液検査では黄疸の数値が少し下がり、炎症も沈静化傾向であることを示唆していました。
   超音波検査でも胆汁鬱滞は改善している所見でした。
   ネコはまったく食べない状態が続くと脂肪肝になることがあります。
   自発的に食べられるようになることは大きな1歩です。
   何か食べるものはないかと試されたご家族の努力に感謝です。
   回復の兆しが出てきてとっても嬉しい。
   
12.30  お父さんが薬を取りに来られました。ふくちゃんはささみを食べているとのこと。
   
1.3  大学対抗の箱根駅伝大会で沿道から選手の応援をしていたところ、
   ふくちゃんのお父さん夫婦とばったり会いました。
   ふくちゃんは年が明けたころからドライフードも食べるようになり食欲が増したとのこと。
   年始そうそう嬉しい知らせ。
   このまま回復してくれることを願うばかり。
   
1.6  お父さんが薬を取りに来られました。食欲はあるよう。
   ただ元気はいまひとつとのこと。
   疾患によって回復に時間がかかるものもあるので様子をみることにしました。
 
気持ち良さそうに寝ているふくちゃん
(後ろは弟分のとめぞうくんです)
2009.1.12撮影
*画像をクリックすると拡大します
1.13  久しぶりにふくぞうちゃんがお父さんに抱えられてやってきました。
   ふくぞうちゃんの様子は、食餌は食べるが相変わらず元気が今ひとつないとのこと。
   便は普通の固さだが、鮮血らしきものが付いていたみたい。
   血液検査をしたところ血球計算では炎症が悪化している結果でした。
   更に悪いことに貧血もかなり進行していました。
   消化管からの出血によるものと思われました。
   炎症は改善してきていただけにとてもショック。貧血もこのまま進行すると具合がよくありません。
   
1.22  食餌は通常の50%位は食べているとのこと。体重の変化は最近はみられません。
   吐き気、下痢もないよう。
   血球計算では、炎症は僅かに良くなっている様子。
   貧血の数値に変化はありませんでした。貧血が進行していなかったのでひと安心です。
   一般状態や血液検査の数値をみるかぎりふくちゃんの病状は決して軽くありません。
   それなのにふくちゃんはよくがんばっていると思います。
   
1.27  この日はふくちゃんのお父さんがふくちゃんの尿を持ってこられました。
   検査をしたところ、尿中にビリルビンが出ている以外は異常ありませんでした。
   食欲はあるとのことでした。
   
2.2  いつものようにお父さんのダウンジャケットの内側に抱えられてふくちゃんがやってきました。
   食欲が通常の量の80~90%に回復したとのことでした。
   ただ鳴き声が声にならなくなってきたことをお父さんは心配されていました。
   また、おなかが少しはってきて筋肉が落ちてきていることも気にされていました。
   超音波でおなかを見てみると若干腹水が貯まっているようでしたが採取できるほどではないように思えました。
   血液検査をしたところ貧血は少し改善していました。
   炎症性の細胞も減ってきていましたが黄疸の数値は若干上昇していました。
   この日は改善傾向と悪化傾向の両方が認められどっちとも言えない状況でした。
   食欲が改善しているので良くなっていると思いたいところです。
   
2.5  朝お父さんが来られてふくちゃんが亡くなったことを知らせてくれました。
   前日に少し様子がおかしかったようです。
   突然の訃報にショックでしたが、ご家族のショックははかり知れません。
   亡くなった直接の原因は想像の域を超えません。
   とても残念です。
   ただふくちゃんが闘病中の約2ヵ月間、自宅でご家族の方たちとともに過ごす
   ことができたことは結果的には良かったと思いました。
   このことはご家族の献身的な看護があってのことと感じました。
   ふくちゃんのご冥福を心より祈っています。
   また、診療日誌に闘病記録を公開することを快く承諾してくださったふくちゃんの
   ご家族にはとても感謝しています。
   ありがとうございました。
   
  ★以下お父さんからのメッセージです★
   
  2009年2月5日朝5時30分ころ妻の声が台所から聞こえました。「あなた大変、ふくちゃん死んでる!」
  普段はもう少し寝ているところですがびっくりしてベッドを飛び出していくと、水のようなものを吐きながら
  冷えた台所の床で事切れていました。8歳と6か月。
  ここ数日体重の変化がないにもかかわらず背中と腰の肉が落ち、腹部が異常に膨らんでいましたし、
  前日の日中に2度ほど吐いて気にはなっていたのですが、まさかこんなにあっけなく逝ってしまうなんて・・・。
  胸が張り裂けそうです。
  やはり寂しい。
  いつもそこにいるはずのふくちゃんがいない。声が聞こえない。甘えてこない。
  2000年12月はじめ頃に住んでいた東京郊外で「しょうちゃん」という名のやはり8歳のオス猫を癌で
  失いましたが、その死に際を動物病院でじっと見ていたのがふくちゃんです。
  里親募集中で最後に残った一匹でした。
  そのとき家にはもう一匹12歳のオス猫がいて、寂しいだろうと私たち夫婦が引き取ったのが関係のはじまりです。
  2000年8月生まれですから生後4か月ほどでした。
  穏やかな性格で、引っ掻いたり噛みついたりすることは一度もありませんでした。
  甘えるときは私の膝の上にぴょこんと乗っかり私のあごをパクッパクッと甘噛みしてくれました。
  マウスを握る私の手を枕にして寝るのが大好きだったふくちゃん・・・。かわいかったなぁ。
  妻はいつも呆れていました。
  勤め人である妻よりも自宅で働くことのほうが多かった私はふくちゃんと触れる時間も長く、距離も近かったせいでしょう。
  思い入れが過ぎるという自覚はあります。
  それでも思い返すと胸がドキドキします。
  猫を看取ったのはこれで3度目ですが、毎回同じことの繰り返しです。
  でも仕方がありません。慣れることはないでしょう。
  時間とともにふくちゃんの存在は記憶として定着すると思います。
  そしてふくちゃんが私たちの記憶から消えることはないでしょう。
  私たちが生きている限りふくちゃんは永遠です。
  とても素敵な出会いでした。
  またどこかで会える日を楽しみにしています。
  私たちは幸せでした。
  ふくちゃんありがとう。
   
  ※さくら動物病院の院長およびスタッフの方には大変お世話になりました。
  とても親身になって治療にあたっていただきました。自宅近くにこうした動物病院ができたことをうれしく思います。
  ほかにも猫がいますので、何かの折にはお世話になりたいと思っています。
  また、このような私的な駄文を掲載させていただき感謝しています。
  ありがとうございました。